小泉花恋振り返り7:私の変化とお金のこと

なんと最後のブログから約2か月振りの更新。ソロアイドルとして最後のメディア出演「バカリズムの30分ワンカット紀行 東上野編」も良い形で世に出てホッとしたところです。「小泉花恋振り返り」とタイトルを付けているけど、小泉花恋自身の話というより「小泉花恋プロジェクト」の話だし、なんなら私の話が中心です。オレだー!


私の変化


小泉花恋の運営をするにあたって自分を変えたり勉強したりしたことが沢山あります。たとえば始めた当初は30回ほどですが、あらゆるカテゴリーのダンスレッスンに通いました。私はダンスの基礎がないままクラブとアイドルの振りコピで「なんとなく踊れる人」になったので、ちゃんとレッスンを受けたのは初めて。ジャズ、ヒップホップ、ハウス、ロック、バレエ、シアター、バーレスク、フラメンコ、ヴォーグ、ベリー等々、さわりですが基礎を勉強して振付に活かしました(初期の小泉花恋の振付は全て私が手掛けています)。


またファンは愛すべき存在だけれど、時に気持ちが裏返しになって暴動を起こすリスクがゼロではない以上、いざという時は私が花恋を守らないといけない。そこで格闘技を習い始めました。これもいろんなレッスンを受けてみた結果、自分に合っていると感じたのがキックボクシング。ライブのスタミナがつくし、太くならずすぐカーヴィーな体になるので、アイドルにもおススメ。バセドウ病を発症するまでは通って、最悪の事態に備えていました。


音源制作の勉強になったのがテレビ朝日の音楽バラエティ番組「関ジャム 完全燃SHOW」です。毎週録画してコード進行のロジックや歌詞の妙などノートに取って勉強しました。これからアイドル運営になりたい人は絶対に観たほうが良い番組!


小泉花恋とうまくコミュニケーションが取れないと感じた時期には、勉強しに行ってカウンセラーの上級資格も所得しました。資格所得前から感情的に叱らず、私がなぜ良くないと感じたかを話したうえで「なぜそう考えて行動したのか」「どうすれば良かったのか」「同じことを起こさないためにはどうすべきなのか」を本人に考えさせるカウンセリングのようなコミュニケーション法でしたが、私が淡々と直接的な物言いをするうえに、小泉花恋が感情や行動を言語化するのが苦手なのも相まって、詰められるような息苦しさを覚えているようでした。これがちゃんと勉強したカウンセリングの技法を使うことによって、少しまろやかに話を聞き出せるようになったと思います。


外見的なことだと、原色や大きな柄などド派手な服を好んで着ていたのを、現場に立つときは黒や紺で地味になるようにしていました。私のほうが身長が高いし、顔のパーツは全部情緒なくデカいので、遠目にどうしても目立ってしまうことを小泉花恋が気にしていたのがきっかけ(なんてかわいい!)パーソナルカラー診断では原色と黒が得意なウィンタータイプなので、無理に服の色を変えたというより、赤や黄などの差し色を抜いた感じです。

アイドル運営になった2015年当時。特にヲタクを威嚇するような原色の赤を好む。余談だけど、パーソナルカラー診断、自分が何タイプか知ると面白いので検索してみて。


アイドル運営はなにかと走ったりしゃがんだりするので、スニーカーとガウチョパンツ(フェミニンさとアンチセクシャルさのバランスが丁度良い)が定番でした。ヒールを履かなくなったので、太いなりに脚の形がキレイになったのは儲けものだと思っています(ヒールを履くと前ももとふくらはぎが張るので)。


行動で一番大きな変化といえば、自分のなかに「別に嫌われてもいいけど、嫌われてないほうがラクに生きていける」というベースがあるので、人と距離を取りつつ、誰に対してもヘラヘラ愛想良く対応するようにしているのですが(黙ってるとキレてる・睨んでると思われる顔だし)、ナメてつけ上がりそうな気配のある相手に対しては怖い顔を活かして冷たくあしらうようになりました。時には出禁も厭わず、トラブルに対しては最優先事項で動いていたので、自分の仕事が疎かになってしまって、失った仕事もあります。フリーランスは信用第一なので、二度とリピートが掛からないことを思うととても悔しいのですが、反省しつつそういう時期だったと諦めるしかありません。新規で仕事が取れるよう精進します。


お金のこと


小泉花恋卒業から2か月半。一番きかれたことが「ぶっちゃけ儲かった?」でした。ハッキリ言います。3桁万円の赤字です。でもそれを4年×12か月で割って「趣味」と考えると…ふしぎ!「他にもっとお金が掛かる趣味はいっぱいある!」って思う!ちなみに小泉花恋プロジェクトが全て発注された仕事だったら…と皮算用したことがあるのですが、地方都市にマンションが買える額になってしまいました…(笑)。


なぜこんなに赤字かというと、シンプルに私のギャラがずっと0円で遠征以外の交通費を一度たりとも抜いてなかったから。経費もだいぶ出してる。一方で小泉花恋には毎回の売上の3〜4割を渡し、その中から交通費や美容代、交際費、レッスン代、ファッション代などアイドル活動に必要なお金として使ってもらっていました。残りは活動費として貯蓄。決して高額ではありませんが、売上から考えると相当渡しているほうです。


というのも自分が芸能を頑張っていた10代後半〜20代前半、つまり小泉花恋と同い年だった時に一番イヤだったのがお金がないことだったから。お金がないこと自体は覚悟もあって乗り切れることなんだけど、愛人をやってる子や事務所に禁止されている水商売をやってる子の羽振りが良いのを見ては、理不尽や不平等を感じてしまうことが何よりイヤだった。小泉花恋にはそういう思いをさせたくないという気持ちが強くて、「私は自分の仕事で稼ぐ」というスタンスを崩せませんでした。だから私自身は小泉花恋プロジェクトでは赤字だったんです。


小泉花恋プロジェクトはきっちり仕事としてやっていましたが、自分の心の中では「趣味」と割り切るようにしていました。じゃないとお金が出ていくばかりの不健全な経営を長くは続けられません。あとは「勉強させてもらっている」とも思って心の平穏を保つようにしていました。私は聖人君子からは程遠い人間なので、常々「あわよくば回収」と思っていましたが、小泉花恋の良さを潰すような短絡的な商売をしないためにクリエイティブにお金を掛けていたので、最後まで黒字転換することはありませんでした。


アイドル運営は軌道に乗るまで出て行くお金のほうが多いです。特にコストが掛かるのが楽曲制作費、衣装代、アイドルへのギャラ、レッスン代、遠征費、会場費、デザイン費、振付代、WEB制作費など。日々の交通費や雑費、ライブハウスに多い物販手数料(売上の1割)も馬鹿になりません。


アイドル戦国時代に「アイドルは儲かるらしい」とアイドルへの愛がない運営(特にもともと芸能事務所じゃないところが多い)が雨後の竹の子のようにアイドルを生み出しましたが、その8〜9割が既に解散しています。運営が存続を希望するだけの黒字を得て、アイドルたちが「お金がなくて辛い」と思わない額の収入を得るのはとても難しいのです。レッスン費を取るところや、衣装代・交通費が自腹なうえにギャラを出さない運営も多いです。


一見売れているように見えるアイドルのなかにも、上記のような理由で生活できるほどにはギャラをもらえてないのに、ライブや撮影、取材、レッスンが入るせいでバイトをする時間がない子は沢山います。一人暮らしをしているアイドルが影で貧困に喘いることも少なくないのです。切り崩す貯金がなくなった時の選択肢は、「アイドルを辞める」「水商売を始める」「生活を支えてくれる男性を見つける」と、どれもファン泣かせ。もはや私は推しが困ってそうならQUOカードやおこめ券をあげたい(金券プレゼントNGの運営が多いので各自確認をば)。


そういったアイドル業界のお金の話をするとともに、花恋にはいつも「あなたが実家暮らしだから、いまの活動は成り立ってるんだよ。ご家族への感謝を言葉や行動にしてね」と言っていました(普通に良い子なので、私が言うまでもなかったかもしれないけども)。お金の話をする運営は少ないそうだけど、お金の仕組みがわかるといろんなことが腑に落ちるので、定期的に貯めているお金と出入り額を共有していたし、そこに不信感を抱かないようにしたかった。


ラストライブの後にスタッフにギャラを支払って、残ったお金は花恋と折半。今まで私がギャラを抜いてないことを考えれば、全額もらっても…と脳裏をよぎる額ではあったのですが、自分が花恋の立場で考えたら「自分が頑張ったお金」っていう気持ちは拭えないし、どんなに論理がわかっていても感情として納得ができなくて遺恨が残りそうだと思ったから。半額でも大学生にとっては大金だし、将来に役立てる資金になるんだったら私は嬉しいです。


なんでわざわざお金の話を書いたかといえば、愛のない運営のせいで貴重な数年をあまり良い形で過ごせない女の子たちが沢山いるからです。売れる保証がなくても、宝くじのように挑戦し続けないと売れる日が巡って来ないのが芸能。数年はマネタイズできなくても蓄えからアイドルとスタッフにお金を支払える運営が本来あるべき姿だと思います(あくまで私の運営ギャラ0経営は飛び道具的手法)。


「儲かるっぽい」みたいな軽率な気持ちでアイドルを作ってほしくない。キラキラした夢を描いてアイドルの世界に踏み込んだのに、「大人の事情」に振り回されて数ヶ月で解散…みたいな憂き目に遭う女の子が少しでも減ってほしい。だからはっきり言う。儲かるのは実直に面白いことを突き詰め続けて、運も掴んだほんの一握りだけ。多くのアイドル運営は儲かりません。


や・め・て・お・け!